文化
一般に活版印刷術、羅針盤、火薬をルネサンスの三大発明と言う。この3つの技術が、ルネサンス期以降の西欧において大きな役割を果たしたことは事実である(ルネサンス自体を生み出した訳ではない)。ただし、この呼称は、適切とは言いがたい。なぜなら、この内の羅針盤と火薬は、すでに中世から存在したし、また西欧で独自に発明されたものではない。むしろ、外界から伝わったこれらを改良していったところに、その歴史的重要性がある。
フランシス・ベーコンの『ノヴム・オルガヌム』129に印刷術・火薬・羅針盤の3つが世界を変革した、という記述がある。
ヨハネス・グーテンベルクによる活版印刷術(1450年頃)の普及まで、書物といえば写本であり、文字通り写字生によって一字一字写されるもので、時間と手間がかかり、高価なものであった。活版印刷術により、写本とは比較にならないほど大量の刊行も可能になった。印刷物も初期にはまだ高価なものであったが、次第に低価格化して知識の普及を促し、人文主義や自然科学の興隆を助けた(15世紀の出版物についてはインキュナブラの項も参照)。また、16世紀の宗教改革運動が展開するうえで、印刷されたパンフレット類が大きな役割を果たした。
活版印刷の発明者については異説もあり、オランダ人のコスターが1440年頃に活版印刷を発明したとも言われるが、印刷物も残っておらず、確かな証拠はない。
活版印刷術が西欧内で独自に発明されたものであるのに対し、羅針盤と火薬は、他世界から移入されたものである。火薬は中国で発明され、その知識はイスラム世界を経由して、ヨーロッパに齎されたらしい。火薬を用いた兵器の開発によって、西欧世界の戦力は増大した。羅針盤もまた中国で発明され、イスラム世界を経由して、ヨーロッパに伝わった。これによって、航海術は著しく発達し、大航海時代が始まる。